ただの風邪じゃ済まされない?――急性呼吸器感染症(ARI)が5類になった理由とは

こんにちは。上野治療室からです。

2025年4月7日から、急性呼吸器感染症(Acute Respiratory Infection:ARI)が

感染症法上の「5類感染症」に位置付けられることとなりました。


https://medical.jiji.com/news/60090

これにより、定点医療機関による患者数の報告が義務化され、流行状況の監視が強化されます。

この変更は一見すると「風邪」を届け出るようなものに思えるかもしれませんが、

その背景には重要な公衆衛生上の目的があります。

ARIと風邪の違い
まず、急性呼吸器感染症(ARI)と一般的な「風邪」の違いを理解する必要があります。

風邪は通常、鼻水や咳、微熱など軽度な症状を伴う疾患であり、
その多くはライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスによるものです。

一方、ARIは急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎など)や

下気道炎(気管支炎、肺炎など)を含む広範な疾患群を指します。

インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス感染症などもARIに含まれます。


つまり、「風邪」はARIの一部であり軽度な症状が中心ですが、
ARIはより重篤な疾患も含むため、その監視は単なる風邪以上に重要です。

5類感染症への分類の目的
では、なぜARIが5類感染症に分類されたのでしょうか。その理由は以下の通りです:

流行状況の把握
ARIは飛沫感染を通じて周囲に広がりやすく、多くの人々に影響を与える可能性があります。

これまで新型コロナウイルス感染症で得た教訓を活かし、
日常的に流行する疾患としてその動向を監視することで公衆衛生対策を強化する狙いがあります。

パンデミック予兆の早期探知
ARIサーベイランスは、新たなパンデミックにつながる
未知の呼吸器感染症を迅速に探知するための仕組みでもあります。
この監視体制によって、新たな病原体が国内外で発生した際に早期対応が可能となります。

定点把握によるメリット
5類感染症として定点医療機関で報告される仕組みは、行政や医療機関にとって以下の利点があります:

科学的・医学的対応の強化
流行性疾患の正確な把握が可能となり、適切な治療方針や予防策が立てられます。

危機管理能力の向上
未知の呼吸器感染症や海外から侵入する新たな病原体への対応力が向上します。

また、この変更によって患者の日常生活への特別な負担や制約はありません。
報告対象となる患者も「咳嗽、咽頭痛、呼吸困難など急性症状を呈し、医師が感染症を疑う外来例」
と限定されており、一部のみ検体提出が求められる形です。

まとめ
急性呼吸器感染症(ARI)の5類感染症への分類は、
「ただの風邪」では済まされない公衆衛生上の重要な取り組みです。
この変更によって流行状況が詳細に把握され新たなパンデミックへの備えが強化されます。


私たち一人ひとりもこの新たな仕組みを理解しつつ、自身や周囲の健康管理に努めることが求められるでしょう。

日々

前の記事

横須賀へ日帰り旅行
日々

次の記事

2002年4月 初めての大阪